住職より
合掌
いま世界中で、もちろん日本においても、あらゆるところで分断と対立が繰り広げられています。
その分断と対立は政治的なものや経済的なもの、社会的なものなど様々なものです。身近なものでは、例えば貧困の問題や障がい者・児の問題、外国人労働者の問題、人種差別問題、教育格差問題など枚挙にいとまがありません。
日本社会におけるこれらの問題は、特に、自己責任論の考え方が蔓延していることがなかなか解決に向かわない大きな原因のひとつであると思われます。このことに関して興味深い意識調査があります。
「自力で生きていけないようなとても貧しい人たちの面倒をみるのは、国や政府の責任である。この考えについてどう思うか」という問いに対して、「そう思わない」と答えた人は、中国では9%、イギリスでは8%、ドイツでは7%の人であったそうです。これは、大半の人が、貧しい人の支援は政府が行うべきであると考えているということです。貧困を社会的な問題と捉えているのですね。しかし、日本では「そう思わない」と答えた人が38%であったそうです。アメリカですら28%でした。(The Pew Global Attitudes Project、 2007年)
つまり日本では4割弱の人が、貧しい人は自己責任でそのような状況に置かれたのだから切り捨てられてもしかたがないと考えているのです。
私たちは、皆が安心して笑って暮らしていける社会を目指すために、このような悪しき自己責任論社会を何とか変えていかなくてはなりません。もちろん来世以降の善き生き方へつなげていくためにも。
その変革のための処方箋となるのが法華経であり、妙薬であるお題目なのです。
法華経は即身成仏の教えであるといわれます。
仏道を成就するためには、お経を読んだり滝にうたれたり、座禅をしたり回峰行をしたりといったことももちろん有効です。
しかし、法華経は何よりも、久遠の仏の大慈悲に気づき、実は久遠の仏と自分とは別々のものではなくひとつであるということ(もちろん他者ともつながっている)を会得することを重視します。自分の中の仏界を強く信じて現前させて行動していくことを推奨しています。
そして日常生活の中で、自分の仏界に焦点を当てながら行動するためにお題目があるのです。
自分の利益だけを考えて行動するのではなく、自分が関わるものたち(人間以外も含めて)がどうすれば幸せに暮らしていけるかを考えて行動していくためにお題目があるのです。
ここ切畑には1606年に作られた題目講を受け継ぐ唱題講があります。
現代に至るまで綿々と絶えることなく法華経・お題目信仰が熱心さをもって継承されているのです。
そのような切畑の法性寺の住職をこの度務めさせていただくことになりましたが、いいようもなく有難いことであり喜ばしいことであります。
まさにこの法性寺より、切畑の法華経信仰の伝統を核となし、一切の生きとし生けるものが安穏に生きていける世界を目指す仏道を皆様とともに歩み、法華経に依った生き方を少しでも広めていきたいと考えております。
南無妙法蓮華経
住職プロフィール
学生時代より東洋哲学や西洋思想に親しむ。
仏教には人生をより生きやすく楽にするエッセンスが溢れており、そのことをもっと多くの人たちに知ってもらい、ぜひとも日常生活のなかで活用していただきたいと考えている。
早稲田大学第一文学部東洋哲学専修卒。身延山久遠寺僧道実修第34期修了。日蓮宗社会福祉法人立正福祉会相談員。堺五行易研究会所属。社会福祉士。
庫裡より
合掌
坊守の妙勇と申します。
この素晴らしい、美しい大阪の里山にあるお寺で毎日仏さまにお給仕させて頂いております。
ところでこのお寺には、伝教大師御作と伝わる十一面観音さまのお堂、鎮守堂がございます。小さなお堂ですが、 以前から、この観音さまは特に女性の方から慕われてきたようでございます。
見る方の心により表情の変わるこの観音さまのお顔を拝しておりますと、いつしかじんわりと優しい心に還る自分に気付き、自然と涙になって溢れてくるのです。
どうぞどなたさまもお気軽にお寺にお参りされ、お堂で少しでも仏さま(自分自身)と向き合う時間を過ごされ、きれいな心になってお帰りください。
お釈迦さまは、どのような人でも必ず、自分と同じ仏さまになれるとお説きになられました。そうなるには、自分自身が既に仏さまの種を持っているということを思い出し、それを育むご修行を、日常生活において常に実践することです。例えば人にやさしくするとか、いつも笑顔を心掛けるとか無益な殺生をしないなど、ほんの少し気を付けるところから始めます。人のために、仏さまのように働くことが我が喜びである、というのが菩薩の心です。
そして、末法と呼ばれる現世でのご修行の一番は、南無妙法蓮華経のお題目を真っ直ぐに、仏さまのような清らかな気持ちでお唱えすることです。それを人生の全てで教えて下さったのが我らがお祖師さま、日蓮大聖人でございます。日蓮聖人は、「お題目だけでいいんだよ」と仰いました。
唱えてみたいけどやり方がわからない…という方もどうぞどうぞ、お題目・お経をご一緒にお唱えしましょう。お唱え終わりました時、胸に湧き上がる歓喜は仏さまの喜びと同じものであることでしょう。
当知是処 即是道場(まさに知るべし このところは即ちこれ道場なり)
法華経を繙けば、何処に於いても今居るこの場が仏さまと共に歩む道場であります。
どうぞお気軽にお声がけくださいね。
南無妙法蓮華経
(裡)妙勇
妙勇プロフィール
雑誌の編集やソフトウェア開発会社を経て、フリーランスでIT関連のデザイナーとして生活する傍ら、法華経を学びはじめる。
2010年2月16日師父のもとにおいて得度。2016年6月、日蓮宗の最終義務教育「信行道場」を成満し日蓮宗教師(僧侶)となる。障害者の子ども・親と暮らせない子どもと関わりを深くし、どんな子どもでも大切な仏さまの子、子どもたちと仏さまのご縁結びをしたい!と寺子屋を企画開催したり、地域活性化事業や障害者就労支援に取り組み中の二男児の母。保護司。